カルバペネム系抗生物質

広範囲に抗菌力を持つので、臓器が特定出来ない、起炎菌が特定できない感染症に使用する。最近ではMDRP(多剤耐性緑膿菌)の出現が問題(カルバペネム・フルオロキノロン・アミノ配糖体に耐性を持つ)。
副作用:痙攣発作、バルプロ酸血中濃度を下げる。
広域といっても、結局ターゲットとなっている微生物は、緑膿菌とB.fragilis(稀にESBL産生菌)が多い。

緑膿菌:多くのガイドラインでカルバペネムがエンピリックセラピーの選択肢の1つに挙げられている。その他、セフェピム(マキシピーム)、セフタジジム(モダシン)、アミノグリコシド、抗緑膿菌ペニシリン(ピペラシリン・・・)なども有効。必ずその施設の最近のアンチバイオグラムに基づいて最も信頼できる抗緑膿菌薬を選択するべき。

・B. fragilis:横隔膜下臓器の感染症なので内科的治療というより外科的治療の場合が多い。日本にはメトロニダゾール静注薬がないので、B. fragilisに対して90%以上の感受性が保障されている薬剤が、カルバペネム、ピペラシリン・タゾバクタムとアンピシリン・スルバクタムくらいしかない。ピペラシリン・タゾバクタムは配合比率の問題で保険診療を逸脱した使用をせねばならないので施設によっては使用できない。アンピシリン・スルバクタムは腸内細菌属のカバーも不十分になる可能性があるので、複雑性腹腔内感染症でも重症例では単剤使用できない。したがって、重症複雑性腹腔内感染症はカルバペネムを使用しなければならケースがある。CLDMが有効なことも多く、3世代セフェム+CLDMでも良いかもしれない。

第1世代

  • パニペネムPAPM/BP(カルベニン):1987年。三共製薬

   髄液移行性が良い。国産初のカルバペネム

   メロペンと比べて、GPC(Enterococcus faecalis)に強い。
中間型

新世代

   GPC・GNR・嫌気性菌に有効。抗緑膿菌(D2透過孔欠損の影響を受けない)。
   チエナムと比べて、GNRに強い。腎機能障害時の投与方法に注意。

   今のところ最新の薬。腎機能障害時の投与方法に注意。

  • エルタペネムETPM(INVANZ):日本では未発売。

カルバペネム系で効かないもの。

GPC:MRSA, MRSE, VRE, (MEPMは腸球菌にも抗菌力なし)
GNR:多剤耐性緑膿菌, Sマルトフィリア, B.セパシア(MEPMはセパシアに抗菌力あり)
その他:細胞壁を持たないもの(Mycoplasma, Chlamydia, Legionella)

以下の場合には原則として使用しない。

 大抵の院外感染・術後感染予防・MRSA感染症
 重症の緑膿菌感染での単剤使用
 緑膿菌以外のPseudomonas感染症
 重症のEnterococcus感染症での単剤使用